政策提言/リサーチ Policy&Reserch

2014.02.27

【スペシャル対談】村瀬剛(整形外科医 大阪大学講師)× 松本和巳(ナカシマメディカル海外営業グループ次長)× 金森サヤ子(JIGH 調査事業本部 部長)(1)
「医療におけるジャパンブランドの強さ」

「医療におけるジャパン・ブランドの強さ」

 

【村瀬剛氏プロフィール】  【松本和巳氏プロフィール】  【金森サヤ子プロフィール】

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大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(整形外科)講師 村瀬剛氏

金森:本日はお忙しい中、お集まり頂き誠にありがとうございます。お二人には「シンガポール及び香港における日本式パーソナライズド骨変形治癒矯正診療事業」で現在ご一緒させて頂いているということで、インタビューにご登場頂いております。どうぞよろしくお願いします。

村瀬、松本:よろしくお願いします。

金森:今回の「日本式パーソナライズド骨変形治癒矯正診療事業」は、日本の優れた医療サービスの国際化や、日本の医療機器・医薬品産業などの国際競争力強化を目指す、経済産業省主管「医療機器・サービス国際化推進事業」の一貫で実施している事業です。まず最初に、このパーソナライズド骨変形治癒矯正診療を開発され、実際に治療をされている村瀬先生に簡単にご説明をお願いしてもよろしいでしょうか。

村瀬:はい。まず、骨変形治癒とは、骨折後に骨が変形してしまった患者さんの骨の変形を治すということです。それに「パーソナライズド」という言葉がついています。なにをするかと言うと、骨折患者さんの骨をCT撮影して、その撮影データを元に個々の患者さんの骨の形を3Dモデルで再現し、正常な骨を基準にして矯正シミュレーションを行うんです。さらに、3Dプリンターを使ってその患者さんに合わせた手術部材をつくって手術に使うので、「患者さん個人に合わせた」という意味で「パーソナライズド」と呼んでいます。

金森:これまでの治療法とはどう違うのでしょうか。

村瀬:これ以前は、骨の変形の様子を知るために、レントゲンを使っていたのですが、二次元の情報なのでおおよそでしか変形の様子がわからなかった。なので、特に複雑な症例の場合などは十分にプランニングできず、医者の経験や感覚に頼って手術をすることが主流でした。それが、三次元でのシミュレーションすることで、正確に変形の様子がわかるようになりましたし、患者さんにぴったり合うようにつくられた部材を使うことで、術後の骨折部位の動かし易さや痛みの軽減といった点で、大きく進歩しました。私がこの方法で初めて手術をしたときには、身震いするほどうまくいって、本当に感動しました。

金森:日本でも最新技術と言える治療法だと思うのですが、これをアジア地域に輸出する意義はなんでしょうか。

村瀬:アジアの国々では交通事故が多いなどの理由で、骨折患者さんが多く、骨折後に骨が変形してしまう方がたくさんいらっしゃいます。さらに、その患者さんたちの多くが生産年齢人口である若年〜中年層なので、社会・経済的にも大きな負担となっています。そのため、この治療が普及して、患者さんたちの骨変形がきちんと治るようになれば、その国の発展に大きなインパクトがあると思っています。

金森:なるほど、ありがとうございました。一方で松本さんは、ナカシマメディカルの海外営業部にご所属ですが、ナカシマメディカルさんの技術は今回のプロジェクトではどう関わっていらっしゃるのでしょうか。

松本:先ほど村瀬先生から3Dプリンターを使って患者さんにぴったり合う部材を作る、とご説明頂きましたが、当社はその部分を担っています。当社の母体はナカシマプロペラという船舶のプロペラ製造する会社なのですが、時代とともに船舶の需要が減ってきたこともあり、事業の多角化として医療機器事業を開始しました。

金森:プロペラ製造と医療機器とは大きくかけ離れているように感じますが。

松本:主に人工関節などを製造しているのですが、精密なプロペラの三次元曲面を加工する技術があれば、人工関節もつくれるのではないかとある医師の方にアドバイスを頂いたことが製造を始めるきっかけになりました。

金森:日本国内でも、医療は成長産業という認識が強まってきていますし、高い技術力を横展開するには最適な分野ですね。

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ナカシマメディカル海外営業グループ次長 松本和巳氏

金森:さて、お二人にご説明頂いた「日本式パーソナライズド骨変形治癒矯正診療」を香港とシンガポールで展開するプロジェクトを現在実施しているわけですが、現地の反応をどのようにお感じになっていますか。

村瀬:現地の医師の方々がとても熱心なことに驚きました。セミナーにも予想以上の来場者がありましたし、反応がとても良かった。ディスカッションがあんなに長いセミナーは初めてですよ。しかも、質問もすべて的を射ていて、理解度の高さを感じましたね。

金森:本当にセミナーは大盛況で、活気がありましたよね。

村瀬:はい。これらの国・地域における、日本の立ち位置も良いのだと思います。安心・安全という点だけでなく、同じアジア諸国として親近感をもってもらえていることを感じました。一緒にやっていきたいという想いを持ってもらえていると思います。

金森:他のアジア諸国では、日本に対する意識はどうなのでしょうか。

村瀬:そうですね、例えば韓国などは、いま政治的には良好な関係が築けているとはいえませんが、医学界では韓国が日本と一緒にやっていきたいという想いがとても強いですよ。良い意味でのライバルで、親日的な先生が多いです。日韓は社会構造も近いので、一緒にやっていけることが多いと思います。中国や香港もそうです。

松本:メイド・イン・ジャパンのブランド力は、アジアではとても強いですね。アジアが日本を信頼してくれている結果として、日本の厚生労働省の承認がそのまま活かせるという点でも、医療機器の海外進出においては非常に重要です。また、同じアジア人同士、体型が似ていますよね。当社の製品はもともと日本人用に作ってきたので、アジア人にマッチするんです。いま、この分野では欧米企業がシェアを占めていますが、アジアにおいては、欧米に比べて日本に強みがあると思います。

金森:日本の医療のアジア進出には、高い可能性を感じますね。

スペシャル対談(2)「日本の中小企業が、グローバルに成功するためになにが必要なのか」に続く